手習2 もう恋愛はこりごり
浮舟を助けてくれた尼君には娘がいましたが、若くして亡くなっています。その娘には婿がいて、今でも時折尼の家を訪ねています。
ある日、その婿が訪ねて来た時に、偶然浮舟を見かけました。(出家した人しかいないこの家に、髪の長い女性がいるとは)興味を持った婿は浮舟に恋文を送ります。
尼君に仕える女房たちは(婿殿は妻が亡くなってもまだこちらを訪ねてくださる。同じ事なら、浮舟さまと一緒になってくれれば)と乗り気になっています。
しかし、恋愛にはもう嫌気がさしている浮舟。気分が悪いとか、下手な筆跡を見られたくないとか言って返事をしません。
9月になって尼君は初瀬にお参りに出かけますが、浮舟は出かけません。その間に婿が訪ねて来ました。
「今日くらいは、顔は会わせずとも、お声くらいかけて差し上げでは」と女房たちは言いますが、浮舟は尼君の母が寝ている部屋へ逃げこんでしまいました。
つくづく浮舟は思います。
実の父親から娘と認められず、長い間地方で暮らし、やっとお姉さまの中の君に会えたと思ったら、不本意に縁が切れてしまった。
薫さまと出会って、やっと不運な身の上から抜け出せると思ったら、匂宮さまに見つかってしまって...そして、流れ流れて今はここにいる。
なんで匂宮さまの甘い言葉にときめいてしまったのかしら。宮への思いが冷めてしまったようです。
やっと朝がきてくれて、ほっとする浮舟です。(続く)