浮舟6 とうとうこの時が来た
浮舟が具合が悪いと言うので薫は使者を送ります。
その使者が宇治に着くと、ひとりの男とばったり。
「あれ、お前は...匂宮さまの手紙の使いだよな。こんなところで何しているんだ?」
「(やべっ、薫さまの使いだ)あ、あのー、私事で来ていまして...」
「すると、自分で自分の恋人に手紙を届けに来たのか?」
「いや、あの、宮さまの従者の○○さまから手紙を届けてほしいと頼まれまして...」
話がコロコロ変わるのでおかしいと思った薫の使者。お供について来た童に「あの男の後をつけるのだ。気づかれないようにな」と密かに命じます。
童がついて行くと、案の定手紙の使いは匂宮の屋敷に入って行くではありませんか。
童からの報告を受けた使者は薫に伝えます。
薫「その手紙の使いが持っていた手紙の色は?」
使者「紅でした」
そういえば、先程匂宮が熱心に手紙を読んでいた。あれも紅の紙に書かれた手紙だった...
ま、まさか匂宮と浮舟は、そういう仲なのか!?
薫は思い乱れます。
なんと抜け目のない男なんだ匂宮は...どうやって浮舟の存在を知ったんだ。
田舎だから、誰かに見つかるなんて事はないだろうと考えていた私は愚かだった。
浮舟も浮舟だ。かわいらしくて、おっとりしていると思っていたが、浮気者だったなんて...そんな性格なら、匂宮の相手にした方がいいだろうか。
いや、匂宮は飽きた女はすぐにポイするからな。姉の宮さまの女房になった女も何人かいると聞く。浮舟がそんな目にあうのはかわいそうだ。
とりあえず、薫は浮舟に手紙を送ります。
「まさか貴女が心変わりするとは思いませんでした。私を世間の笑い者にしないでください」
...!浮舟は心が真っ暗になります。とうとう薫さまは知ってしまったんだ...
言いたいことは分かりました、なんて返事は書けないし、間違いの可能性もあるので手紙は元通りに直し「宛先違いのようなのでお返しします」と薫に返します。
うまいこと言い逃れしたものだな。こんな機転がきくとは。薫は浮舟を完全に憎んではいないようです。(続く)