浮舟5 身動きが取れない
匂宮の情熱的なアプローチにときめく浮舟。一方で、誠実な薫に嫌われる事はしたくないと板挟みに苦しんでいます。
薫は4月にも浮舟を都に迎える予定ですが、それを知った匂宮は先に浮舟を都へ連れて行こうと画策しているようです。
浮舟は悩みます。(匂宮さまは熱烈にアプローチしてくる。けど、あの方は浮気な方だと言うから、いつか冷めてしまうかもしれない。それに匂宮さまは異母姉である中の君の夫ではないか...)
それに、匂宮さまにかくまわれたとしても、薫さまが知らないままということは無いだろう。薫さまに嫌われるのは、辛い。
どちらの方にも決められない。いっそ、私は消えてしまいたい...
そんな中、浮舟の母が宇治を訪ねてきました。
浮舟はこの頃、食事も取れないほど悩んでいて、やせて青白くなっています。いったいどうしたの?心配する母。
いっそ母の元へ行って、落ち着いて考えようかな...
浮舟の母は浮舟の乳母から、都への引っ越し準備について報告を聞きます。「薫さまから女房たちの衣装まで気を配っていただいて、ありがたいことです」ウキウキと話す乳母の様子を見て、浮舟は辛くて気分が悪い様子。
母はその後、浮舟と薫を仲介してくれた尼と話をします。
母「薫さまがこうして大切にしてくださって、ありがたい事です。中の君さまも大切にしてくださいましたけど、思いがけず匂宮さまに見つかってしまって、どうしたものかと思いました」
尼「匂宮さまは女好きなので、分別のある若い女房は大変だと聞いています。宮さまはご立派な方ですけど、この点が問題ですね」
母「もし、匂宮さまと過ちを犯してしまったら、これは親子の縁を切らねばならないと思っていましたのよ」
...!どうしよう、お母さまに匂宮さまの事が知られたら。胸が潰れそうになる浮舟。
いつか、こんなことが知られてしまう前に、死んでしまおう。
そして、母が都に帰る日がきました。このまま別れたらもう会えないと思う浮舟は「もうしばらくいっしょにいたいです」と言いますが、母は「あなたの具合も心配ですけど、あちらに出産を控えた子もいますし、もう帰らないと。もののけ(悪い霊)があなたを悩ませているのでしょう。お祓いなどをするようにね」と帰っていきました。
恋の板挟みに苦しみ、死ぬことを真剣に考え始めた浮舟。雲行きが怪しくなってきました。(続く)