東屋3 厄介な人に見つかった
それでは娘をお願いします、と浮舟の母は自分の屋敷に帰って行きました。
次の日の夕方、匂宮は中の君の部屋にやってきました。しかし、中の君は髪を洗っている最中とのこと。(平安時代の女性の髪は身長を越える長さなので、髪を洗うのは大仕事です)赤ちゃんは寝ているし...
おや、見慣れない女の子の召し使いがいる。新しく参上した子かな?
後をついていくと、今度は見慣れない女性がいます。後ろ姿だが、いい雰囲気。新しい女房だな...匂宮は女を後ろから捕まえます。
「誰かな。名前は何と言う」...えっ、誰!?捕まったのは、事もあろうに浮舟です。(熱心にお話をくれる薫さま、かしら...)でも、どうすればいいのかわかりません。
異変に気がついた浮舟の乳母が「何をなさっているのです!」と制しますが男は「名前を聞くまで離さないぞ」と、くつろいだ様子。(この方は匂宮さまだ!)浮舟と乳母は気がつきます。
「あら、暗いのにこちらはまだ明かりがないのですね」中の君の女房が声をかけます。
浮舟の乳母はすかさず「申し上げます。こちらで困ったことが起きていまして、対応に苦慮しております!」
「なんでしょう、困ったこととは...あら」匂宮が浮舟を捕まえているではありませんか。「確かに困ったことですね。どうしたものか、中の君さまに聞いて参ります」
(ふん、誰が離れるものか。しかし女房の対応ぶりといい、ただの新しい女房でもなさそうだな)匂宮は思います。
「えっ、匂宮さまが浮舟さまを!?」中の君も他の女房たちも困惑します。(困ったこと、どうやって浮舟に気がついたのかしら。あちらの母上からよろしくお願いしますと言われているのに)中の君、どうしたものかと考えます。
そこへ宮中から「お后さま(匂宮の母)が体調を崩されたそうです」と使いが来ました。
よかった、これで匂宮さまも離れてくれるでしょう。女房は知らせにいきます。
「そんなおおげさな話を作ったんだろう。使いの名前は」女房がちゃんと答えるので、匂宮、しぶしぶ浮舟から離れて宮中へ出かける支度をします。
とりあえず近寄られた以上の事はありませんでしたが、浮舟にとっては予想外の出来事が起きてしまいました。このあとどうなるのでしょう。(続く)