浮舟4 アイツには取られたくない!
2月10日頃に宮中で漢詩を作る催しがありました。
みなさんが休憩している中、薫は降り積もった雪を見つめながら「今夜も宇治の橋姫は、一人私を待っているのだろうか...」とつぶやきます。
橋姫(はしひめ)は宇治の守り神。暗に浮舟のことです。
それを耳にした匂宮(薫の奴、浮舟をいい加減な相手とは見ていないようだな。私ひとりが、浮舟はひとりで寂しいだろうと思っていたのに、薫も同じ考えとは...)と嫉妬でモヤモヤして眠れません。
それで、雪道をかき分けるようにして浮舟に逢いに行きました。
まさか、こんな天気の時に逢いに来てくださるとは...浮舟、キュンとしてしまいました。
この前匂宮が来た事は、女房の右近が隠していましたが、今回はひとりでは隠せそうもありません。そこで、女房仲間の侍従(じじゅう)に「実は今こういうことになっていて...」と全部話して協力してもらうことにしました。
匂宮は川向こうの知り合いの家に浮舟を連れて、気楽に過ごそうと考えます。右近は留守番で残り、侍従は浮舟といっしょに出かけます。
二日間を楽しく過ごした匂宮と浮舟。匂宮は「大切に思っている人(薫)はこんなことはしないでしょう。お分かりですか」と言い、浮舟もこくりとうなずきます。
薫に逢えば、薫の誠実さを身に染みて感じる浮舟ですが、匂宮に逢えば熱烈なアプローチに酔いしれてしまう浮舟。名前の通り、落ち着くところなくゆらゆらと浮かぶ小舟のようです。(続く)