御法3 後悔の光源氏
秋になって、紫の上はいくぶん体調の良い日もありました。
しかし、夫と養女がいる時に体調が悪くなり、最後は二人に看取られて、命を終えました。
紫の上が亡くなったと聞いて駆けつけた息子の夕霧に、源氏の君は
「こんなことになってしまった...こうなると、この方が長年望んでいた出家を叶えて差し上げなかったのが悔やまれる。今からでも出家の願いを叶えて差し上げたい。この世での仏のご利益は無いだろうが、あの世での道しるべになるかもしれない」
「まだ息があるのでしたら、たとえ一晩でも出家のご利益はあるでしょう。しかし、もうこれきりとなってしまわれたのでは、出家させたとしても、目の前の悲しみが増すばかりではないでしょうか...」
結局、紫の上が出家できたかどうかは、はっきりと書かれていません。
葬儀はその日の内に行われ、次の日の明け方、紫の上は煙となって天に上っていきました。
たくさんの弔問の使者が来ましたが、源氏の君は目にも耳にも留まりません。弔問や法要は夕霧が代わりに行っています。
「源氏の君は呆けてしまったか」と言われないように、なんとか、親しい方からの弔問に返事を送ります。
源氏の君は以前から考えていた自身の出家を決めますが、「紫の上を亡くした辛さから出家した」と言われることを気にして、まだ思いとどまっています。
次回から新しい章に入ります。