若菜 下6 紫の上が...!
罪の意識におびえ、気分がすぐれない日々を過ごす女三宮。源氏の君も心配になって様子を見に来ました。
そこへ、二条院から「紫の上が息をひきとった」という知らせが。
急ぎ二条院に向かった源氏の君。
「もののけ(悪い霊)のせいで気を失っているだけかもしれない。いま一度祈祷をせよ」と、優れた僧侶を全て呼んで祈祷をします。
すると、女の子にもののけが取りつき、わめき騒ぎました。
紫の上は息をふきかえします。
「他の者は去りなさい。源氏の君お一人に申し上げたいことがある...」もののけが取りついた女の子が話します。
これは...見たことがある。夕霧の母に取りついたあの時の...源氏の君、ゾッとします。
「はっきりと名のるのだ。一体誰だ」
「わたくしを知らないと...冷たい態度は昔のままですね。なんてひどい」
間違いありません。冷泉院の后の母で、かつて源氏の君の恋人だった六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)の霊です。
「紫の上に私のことを扱いの難しい女と言いましたね。もう死んだ身なのだから、他人が悪口を言っても、あなたは否定してくれると思っていました。この方を憎いとは思いませんが、あなたは神仏に護られているので、この方に取りついたのです」
死んでもなお、自分の名誉が傷つくことが許せない六条御息所。
なんとも恐ろしい....
その後、紫の上は小康状態を保てるようになりました。
「この世に未練は無いけれど、私が死んだら夫がどんなに悲しむだろう。しっかりしないと」と紫の上は思っています。
しかし、もののけは退散した訳ではないので、もののけが救われるように仏事を行ったり、また紫の上に近づかないように枕元でお経を読んだりしています。(続く)