若菜 下5 越えてはならない一線を、越えてしまった
柏木は自身の身分が高くなり、女三宮の腹違いの姉の女二宮と結婚しましたが、柏木は「女三宮さまと比べたら、自分は落葉を拾ったようなもの」と思っています。このことから、女二宮は落葉の宮と呼ばれています。
どうも柏木は、女三宮が朱雀院に可愛がられていることから「女三宮さまは、気高く、尊く、うるわしい至高のプリンセス」と思いこんでいるようです。
柏木は女三宮の側近の女房と知り合いで、女三宮に会わせてくれと頼みこんでいます。
「落葉の宮を賜ったが、それはそれ、これはこれなのだ。物越しにただ一言、思いを伝えたい。それだけだ」
女房はとうとう根負けして、手引きを約束してしまいました。
4月の加茂神社の祭りの前日、柏木は密かに六条院に来ました。
他の女房たちは、明日の祭りの準備でそれぞれの部屋にいます。絶好のチャンスです。
側近の女房は、柏木を女三宮の寝所に導きました。
女三宮は突然男が現れて恐ろしくなり、パニックで言葉も出ません。
柏木は、女三宮は気品高く、馴れ馴れしい態度はとってはいけない方と思っていましたが、想像と違って物腰の柔らかい感じに、だんだん理性が消えてしまいます。
この人を連れてどことへなりと行ってしまいたい!
柏木はとうとう、越えてはならない一線を、越えてしまいました...
罪の意識に苦しむ柏木と女三宮。
しかし、それはそれで柏木はその後も何度か女三宮に逢います。
一方、女三宮は柏木を心外な者と見ています。
男といえば父の朱雀院か夫の光源氏しか知らなかった三宮。柏木もイイ男ですが、光源氏と比べれば物の数ではありません。
それでも柏木を拒めない女三宮。強い女性ではないというか、断ることを知らないようです。(続く)