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御法2 死に向かう支度

旧暦3月10日、紫の上は私的に写経していた法華経千部の供養を、二条院で開くことにしました。たくさんの人が準備に関わったり寄進をしたりと、紫の上の人望がよく分かります。当日は、源氏の君の他の夫人方も法要に参列しました。

 

今年の春が最後の春だろうと思う紫の上。お付き合いのある源氏の君の他の夫人方に、お別れの和歌を贈ります。

 

今見聞きしている全て、美しい花、鳥のさえずり、舞う人々や笛の音も、今日で見納めなのだ。そう思うと、普段は目にとまらない人々の姿もしっかりと目に焼き付けておこうと紫の上はしみじみ思います。

人の生命はいつか尽きてしまうけれど、私はここにいる人たちより、先においとましてしまうのね...

 

 

夏になりました。暑さで紫の上は更に弱っていきます。

そんな紫の上を、このたび后の位についた養女の明石の中宮(ちゅうぐう)がお見舞いに来ました。

 

紫の上は話のついでに、自分がいなくなった後の話をします。

「わたくしに使える女房で、あの人やこの人は頼れる人がおりません。わたくしがいなくなった後、どうか気に留めてお世話してください」

 

紫の上は、明石の中宮が産んだ子どもたちの中で、第三皇子、三の宮を特にかわいがっていました。二人きりの時に三の宮にお話します。

「私がいなくなったら、思い出してくれますか?」

「とても恋しく思います。僕はお父様やお母様より、おばあさまが大好きです。おばあさまがいなくなるなんて、いやです」

 

「大きくなったら、この二条院に住んでください。お庭の紅梅と桜は、花が咲いたら大切にしてくださいね。時々は、仏さまにも差し上げてください」

こくり。三の宮はうなずくと、涙をがまんして立っていきました。(続く)