柏木4 最後の願い
女三宮が出家してしまわれた...柏木はガックリとしてしまいます。
この時代の出家は、社会的な死ですから、柏木のショックは相当なものだったでしょう。
そんな折、柏木の親友で、源氏の君の息子の夕霧がお見舞いに来ました。
もう自分の最後は近いと思う柏木は、夕霧にお願いをします。
「あなたの父上に、お詫びしなければいけないことがあるんだ...先日お会いした時、源氏の君は私を許す様子が無くて辛いんだ。
きみからよろしく申し開きしてほしい。死んだ後でも罪が許されたら、きみのおかげだよ」
「何のことか分からないけど、父はあなたを心配しています。もっと早く言ってくれればよかったのに」
「そうだね...それから、何かの折には一条にいる私の妻の、落葉の宮を見舞って差し上げてほしい」
それ以上は気分が悪くなって、言えませんでした。夕霧は泣く泣く帰ります。
その後、柏木は泡が消えるように亡くなりました。
朱雀院が女三宮を可愛がっていたことから「きっと女三宮さまは、気高く、尊く、うるわしい最高のプリンセスに違いない」と思っていた柏木。
女三宮本人ではなく、自分自身の思い込みに恋した結果、破滅したように思えます。
柏木を見ていると「オリビアを聞きながら」のこの一節を思い出すんですよね。
疲れ果てた あなたわたしの まぼろしを愛したの
(続く)