柏木3 夫がだめなら、父に頼もう
女三宮の父、朱雀院は、娘が出産の後体調が戻らないと聞いて心配になり、ある夜そっと女三宮を訪ねます。
女三宮は、すでに出家して僧になっている父に頼みます。
「私の命は長くないかもしれません。こうしてお越しくださった機会に、お父さまの手で、私を尼にしてください」
驚いた朱雀院は源氏の君にも確認します。
「もののけ(悪い霊)にそそのかされて出家したいと言っているのかもしれないと思い、反対しているのですが...」
朱雀院は考えます。源氏の君はあまり女三宮を愛していないと聞いて、以前から娘を心配していました。
病気が理由の出家なら、世間も納得するだろう。源氏の君の名誉に傷が付くこともない。それに、出家したとしても源氏の君は娘を見捨てることはしないだろう。
「もののけのせいかもしれませんが、本人の口から出る言葉です。願いを叶えてあげなければ、万が一の事態になった時、われわれは後悔すると思います。
出家の願いを叶えましょう」
...えっ、まさか朱雀院が出家を許すとは!源氏の君はうろたえます。
女三宮を憎らしいと思う気持ちも吹き飛んで、何度も女三宮に「思い直してください」と言いますが、女三宮は首を横に振るばかり...
こうして、女三宮は父親の手で尼になりました。
朱雀院は、誰より幸せになってほしいと願った女三宮を、自分の手で尼姿にさせることが悲しく、涙がこぼれます。(続く)