鈴虫 穏やかさの中のちょっとした緊張感
年が代わって夏、蓮の花が美しい季節に、女三宮が作られていた仏像の開眼供養を行います。
いよいよ女三宮が本格的な出家生活を送ることに源氏の君は感慨無量です。
「来世でまた、夫婦になれることを願っています」と女三宮に言いますが、
女三宮は「そのお言葉、本心からのものとは思えません」と返します。(まあ、あれだけ冷たい態度をされたらそう思うよね...)
源氏の君は今になって、女三宮を大切にしています。
女三宮の父上は娘のために三条に屋敷を整えましたが、源氏の君は「自分が生きている限りはお世話したい」と女三宮を手元に留めています。
秋になり、鈴虫が鳴いているのを聞きながら女三宮は
「秋は飽きに通じるので辛い季節と知っていますが、この鈴虫の声は聞いていたいと思います」と言ったのに対して源氏の君は
「自分から世を捨てた貴女ですが、声は変わらず、鈴虫のようにかわいらしい」
...おや、この言葉は取り方によっては「あなたは鈴虫のようにかわいらしい」と恋心を言っているように聞こえるのですが。
源氏の君は昔から、障害のある恋に燃える性質(たち)ですから。危ないです。
気を紛らわすかのように琴を演奏する源氏の君。そこへ夕霧が音楽に精通した方々を連れてきたので、宴になります。
すると、冷泉院から「ご一緒に月を楽しみませんか」とお誘いがあったので、皆さまそちらへ伺います。
この章は穏やかな雰囲気ですが、源氏がいまさら女三宮に想いを伝えている疑惑があったりして、緊張感もほんのりあります。
次回は新しい章に入りますが、どんな雰囲気になるでしょう。