胡蝶3 養父の告白
雨あがりの空気がしっとりした夕方、源氏の君は玉鬘の部屋にいきます。女房たちは下がって、ふたりきりで話をします。
玉鬘を見ていると、母の夕顔の面影があります。
「初めて会った時はそれほどとも思いましたが、あなたはお母さまに似ていらっしゃるのですね」源氏は涙ぐみます。
「あなたを見ていると、別人だとは思えません。長年想い続けて、こうしてめぐり会えたのは夢のようです。どうか私を嫌わないでください...」
えっ、まさか源氏の君は私を...!?玉鬘、恐ろしさに震えだします。
「そんなに嫌わないでください。親としての深い思いに、もうひとつ想いが加わるのです。世にたぐいないこの想い、あなたに手紙を送っている者たちに劣ることはありません」
玉鬘はただただ嫌な気持ちで、気が動転しています。源氏も自制して「他の人に気づかれないようになさい」と夜になる前に帰りました。
実の親の元にいたら、こんな扱いを受けることはなかっただろうに...玉鬘は涙をこぼします。
次の日、源氏から手紙がきました。「一緒に寝たわけでもないのに、どうしてあなたはふさぎこんでいるのですか。幼いのですね」
見るのも嫌ですが、返事をしないと女房たちに変に思われます。「お手紙読みました。気分が悪いのでお返事は失礼します」とだけ返します。
玉鬘をめぐる話は妙な方向に動いてきました。
次回から新しい章に入ります。