蛍1 悩める美女
玉鬘(たまかずら)は困っています。
養父の源氏の君は、女房たちがいる時は父親として振る舞っていますが、女房たちがいない時は恋心を訴えてくるのです。せめてお母さんがいてくれたら...我が身の不運を嘆いています。
源氏の君は一度想いを告白してしまったら、かえって胸が苦しい思いをしています。
そのくせ、父親らしく振る舞うのです。蛍宮が熱心に恋文を送ってくるのを見て「この方が恋文を送ってくるのはかまわない。あまり冷たい態度をとらず、時々はお返事を送りなさい」と玉鬘に言っています。
玉鬘は源氏のイヤらしい態度を見てしまってからは、蛍宮の手紙を読むこともあります。蛍宮に関心があるのではなく「誰かと一緒になれば、源氏の君の情けない振る舞いを見ずにすむ」という気持ちからです。
一方、蛍宮は玉鬘からお返事がくるようになったのをうれしく思い、ある日の夕方玉鬘を訪ねてきました。(続く)