薄雲3 母子の別れ
いよいよ姫君が引き取られる日がきました。いつもなら夫が来るのは嬉しいのですが、今日は辛いばかりです。源氏の君も、娘のためとはいえ明石の君に対して罪作りなことをしてしまうと思います。
姫君は無邪気に「お母さん、早く車に乗ろう」と言います。明石の君は涙をこらえられません。
こうして母子は別れました。
二条院へ到着すると、姫君はお母さんがいないのに気づいて泣き出し、乳母があやしていました。その後もしばらくは誰かれと探して泣いていましたが、そのうち紫の上になつくようになりました。
紫の上は「本当に可愛い子を授かった」とすっかり姫君がお気に入り。抱っこしたりいっしょに遊んだりしています。
そんな様子を見てお付きの人達は「紫の上さまの実のお子さまだったらよかったのに」と話しています。
源氏の君は明石の君を心配して、年内のうちに訪ねていきます。紫の上は心が騒がないわけではないのですが、あんなにかわいい姫君と離れてしまったのだからと多目に見ています。(続く)