須磨5 それでもあなたを愛している
朧月夜は世間から物笑いになっていましたが、右大臣が「立場は女官なのだから」と朱雀帝や弘徽殿大后に申し上げて、七月に再び出仕しました。確かに、尚侍は正式な妃ではありませんから。
でも、朧月夜はいまだに源氏の君を想っています。
そんな朧月夜に対し、朱雀帝の彼女への愛情は変わりません。周囲のそしりも気にせず、朧月夜をそばに置きます。
「あの人がいなくなって物足りない思いだ。父院の遺言に背いてしまい、罪を得ることだろう」と朱雀帝は涙ぐみます。「生きていてもつまらないものと思い知った。長生きしようとは思っていない。でも、私がそうなってもお前は、あの人との別れほど悲しんではくれないだろう」
その言葉に朧月夜は涙がほろほろ...
「それは誰を思っての涙かな」
朧月夜は私よりも源氏の君を想っている。そのことに対して恨み言を言いつつも、朱雀帝は朧月夜を受け入れ愛します。お優しい帝です。
しかし、その優しい性格ゆえに母の弘徽殿大后や祖父の右大臣を止められないという一面もあります。(続く)