須磨4 京を離れる
いよいよ出発の日。その日は紫の上とゆっくり過ごしました。夜遅く、月が出た頃にひっそりと出発します。紫の上は「惜しくないこの命に代えてもいい。目の前の別れを引き延ばしたい」と哀しんでいました。
たどり着いた須磨の住居は海から少し入った山の中。こんな機会でもなければ、風流に思うかもしれない。でも、語りあえる人もなく、これからどうやって過ごそうかと源氏の君は不安になります。
生活が落ち着いてきたのは梅雨の頃。京へ手紙を送ります。紫の上と藤壺への手紙は、涙があふれて書き続けられませんでした。左大臣と夕霧の乳母には、夕霧の養育について手紙を送り、朧月夜にもこっそり手紙を送ります。伊勢にいる六条御息所にも手紙を送りました。
それ以外では、琴を演奏したり須磨の風景を絵にしたり、お経を読んだりと世間から離れた生活を送っています。
あまり落ち込んだ顔はしないように源氏の君はつとめています。自分が落ち込んでいると、従者たちも落ち込んでしまう。私のために、彼らは家族と別れたのだから、私がしっかりしていないと...(続く)