花宴2 朧月夜(おぼろづきよ)の君と逢う
照りもせず曇りもはてむ春の夜の朧月夜に似るものぞなき...
美しい女性が古い和歌を口ずさんで歩いて来ます。源氏の君、女性の袖を捉えます。
「まあ、いったい誰ですか」
「こんな趣深い夜に出会ったのです。おぼろげではない、深い前世からの縁があるのでしょう」そう言って源氏の君は戸を閉めます。
「誰か、ここに人が...」
「私は何をしても皆に許されています。(←...もはや絶句)人を呼んでも仕方ありませんよ」
「するとあなたは...」女は相手が源氏の君と分かり、気を許してしまいます。
夜が明けました。二人は扇を交換して別れます。
さて、あの美しい女性は誰なのだろうか。弘徽殿女御の妹君かな。まだ結婚していないのは五の君か六の君。皇太子に差し上げる六の君だったら、気の毒なことをした。
どうやって誰なのかはっきりさせようか。相手の父親の右大臣に仰々しく扱われるのは嫌だしなあ。かといって、このまま誰かわからないままというのもいまいましい...
...って源氏の君、自分が言っていること分かっています?六の君だったら、気の毒どころか、大問題ですよ。(続く)