匂宮2 香りの貴公子
不思議なことに、薫は生まれつき身体が良い香りに包まれていました。彼が「薫」と呼ばれているのもそれに由来します。
離れた所にいても、風が吹けば香りが広がり、「あ、薫の君、そちらにいらっしゃるのですか」と気がつかれてしまうほど。
「お香とか使っていないのに、気がつかれるんだ...」と薫は面倒に思って、お香はめったに使いません。
第三皇子はそんな薫に対抗して、お香をたいて衣服に良い香りを移したり、お香の調合をするのを朝夕の仕事にしていました。
そんなわけで、第三皇子は「匂宮」(におうのみや)と呼ばれています。
美しく、将来も確かで、良い香りに満ちたふたりの貴公子。でも、恋愛に対しては正反対です。
匂宮は恋愛に積極的で、気になる人には声をかけています。「冷泉院の姫宮と一緒になりたいものだ」と、身分がかなり高い方もターゲットにしているようです。
一方、薫は「自分は光源氏の息子じゃないかもしれない...」という思いから、世俗の人と交わるのではなく、出家してしまいたいと思っています。
そのため、恋愛なぞ出家の妨げにしかならないと思っているようです。
恋愛に関しては正反対のふたりですが、娘を持つ世間の親たちは、「薫や匂宮を婿にしたい」と願っています。
次回からはそんな親たちの様子をつづります。