夕霧5 こうなったら...その2
まったく、まじめな人が恋に狂うと、どうしようもなくなるというのは本当なんだわ...
夕霧の奥様、雲井雁(くもいのかり)はあきれています。
もはや夫婦の仲もこれまでのようね。こうなったら...
「えっ、雲井雁が実家に帰った!?」夕霧があわてて三条の自宅に帰ると、男の子だけが残されていました。
当時は夫婦が別れた場合、男の子は男親、女の子は女親が引き取るのが慣例でしたので、雲井雁は娘たちと幼い息子を連れて実家に帰ってしまいました。
戻ってくるよう頻繁に手紙を送りますが、なしのつぶて。夕霧みずから迎えにいきますが、雲井雁は帰る気なんぞありません。
無理強いするのもよくないと思い、夕霧は帰りました。
まったく、誰が好き好んで恋愛にうつつを抜かすのだろう...どこへ行っても気が休まらない。もう恋なんてこりごりだ。
夕霧はかなり恋愛疲れをしたようです。
こんなことになってしまったのを、柏木と雲井雁の父親は残念に思います。落葉の宮に対して、こんな内容の和歌を送っています。
「どうも貴女とは縁があるようですね。息子の柏木の妻として、息子に先立たれた貴女をかわいそうに思い、また、このたびは娘の雲井雁の夫と一緒になったというのを、恨めしく耳にしました」
落葉の宮にしたら、夕霧とは不本意な結婚だったのに、こんなことを言われるなんて...と思ったでしょう。
また、雲井雁が詠んだ和歌の内容がこういうもの。
「世間で『あそこの夫婦は仲が悪い』と聞くのを気の毒に思っていましたが、自分がそう言われる立場になるとは思ってもいませんでした」
なんか、まあ...ドタバタした恋愛劇でしたね。
次回から新しい章に入ります。