若菜 上1 考察・源氏の君の結婚
源氏の君の兄、朱雀院は体調を崩し、出家して僧になることを考えています。
しかし、気がかりなのは母のいない娘、女三宮(おんなさんのみや)。彼女の将来をいろいろと考えた結果、源氏の君に託すことにしました。
「託す」と書きましたが、要するに結婚してくれということです。
源氏の君は断ることができませんでした。
これにより、源氏の奥様の紫の上は、正妻の地位を女三宮に譲らなければならなくなりました。女三宮は自分よりはるかに高い身分の女性ですから。
「夫とて断れない方からのお願いなのだ。憎たらしいことは言うまい」と紫の上は思いますが、源氏と紫の上の仲に亀裂が走りそうです。
なぜ源氏の君は結婚を断らなかったのか。学者の間ではだいたい二つの意見に別れます。
1 兄であり元天皇である朱雀院の直接の要請を断ることはできなかった
2 女三宮の母は源氏の君の初恋の人、藤壺(ふじつぼ)の妹。女三宮は藤壺に似ているかもしれないと興味を持った
しかし、私はこのどちらでもないと考えています。
じゃあ、何かというと...
作者の都合
源氏の君と女三宮は作者の都合で結婚するのだと考えています。
栄華の頂点にたった源氏の君のその後を描くために、新しい登場人物、新しい出来事が必要。そのために作られたのが女三宮であり、彼女との結婚というイベントだと考えます。
次回からは、源氏と女三宮の結婚が決まっていく過程を細かく見ていきます。その過程の中から「作者の都合」も見ていきましょう。