若菜 上2 あり得ない設定
朱雀院は弟である源氏の君の屋敷を訪れた後体調を崩し、出家を考えています。
後に残して心配なのは、母のいない娘、女三宮(おんなさんのみや)のことです。
女三宮の母は、先代の帝の姫宮です...
先代の帝の娘。これは、源氏の君が初めて愛した女性、藤壺(ふじつぼ)が登場した時も、こう書かれていました。
あ、そうすると藤壺と女三宮の母は姉妹なんだと気がつく方は...
いないと思います😅千年前の読者もピンときた人はわずかでしょう。
さて、この女三宮の母が藤壺の妹という設定、私はあり得ないと考えています。
というのも、朱雀院の母は藤壺を目の敵にしていました。
憎い女の妹が、自分の息子の妃になる。そんなこと、朱雀院の母は許さなかったと思います。
藤壺も、朱雀院の母が自分を目の敵にしていることを知っていました。
そんな状況で妹を朱雀院に嫁がせるのは、妹に苦労をかけるだけと分かっていたはずです。
じゃ、何でこんなあり得ない設定が書かれているのか。
源氏の君に、女三宮との結婚に関心を持ってもらうため、作者が伏線として書いておいたものなのです。
源氏にしたって、自分の娘同然の年齢の女性と結婚してくれと言われても、困るだけです。
その困る話を断らないようにするために、作者が伏線を仕込んだと思われます。
次回は、女三宮の婿選びの過程をじっくり見ていきます。