行幸5 なによ、私だって娘なのに
源氏の君も内大臣も「玉蔓は実は内大臣の娘」ということは公式に言っていません。
でも、世間に知れわたってしまいました。あの近江の君もどこからか聞きつけて、弘徽殿女御(こきでんのにょうご)や兄弟たちに不満をぶつけます。
「父上は姫さまをひとり迎えるそうじゃない。お父様が二人もいて結構なこと。でも、あちらも母親が低い身分なんでしょ」
「おいおい、そんな話、口うるさい女房に聞かれたら...」
「黙って。こっちはみんな知っているんだから。尚侍(ないしのかみ)になるんでしょ。私だって、宮仕えのお話があるかもしれないと、並の女房もやらないことまで頑張ってやってますのに。女御さまも冷たいわ」
「尚侍ねぇ...欠員があったら、オレこそ願い出ようかと思っていたところさ」
「まあ、私をバカにして。数にも入らない者が来る屋敷じゃなかったのね。大袈裟に私をこの屋敷に迎え入れて、それでいて私をバカにするんだから」
近江の君、自分がバカにされていることは知っているんですね。
それからというもの、近江の君は下働きの者でも嫌がる仕事を率先して行い
「あたしを尚侍に推薦してくださ~い」
と必死。
そんな近江の君について内大臣は
「気分がふさいでいる時は、近江の君を見ると気が紛れる😁」
と笑いの種にしているそうで。
次回から新しい章に入ります。