葵10 あまり見たくない弔問の手紙
菊の花を添えて紙の色を喪服の色に合わせた弔問の手紙。誰からだろうと見ると、六条御息所からです。素晴らしい筆跡ですが...
正直、葵の上に六条御息所の生き霊を見てしまった源氏の君。なんだか疎ましく感じます。なんではっきりと、見てしまったのだろうか...
とはいえ、せっかくの弔問に返事しないのも失礼だし、彼女の名誉を傷つけることをしてはいけない...
源氏の君は返事にこう書きます。
生きている者も死んだ者も露のようにはかない世の中です。何かに執着するなんて虚しいことです。どうか恨みは忘れてください。
返事を読んだ六条御息所、なんとなくほのめかした内容に「自分が生き霊になったことに、あの方は気がついている」と悟ります。
こんなことが世間に知られたら大変な恥だ。そうなる前に源氏の君から離れよう。そう決心して六条御息所は斎宮が潔斎する野の宮へ行くことに。
この巻に二人が読み交わした和歌の中に、泥田にはまったような恋の路だと歌ったものがあります。恋の恨みで他の女に取り付いて殺してしまうほどの執念。いやはや...(続く)