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源氏物語の魅力を目一杯伝えたいブログ

浮舟8 浮舟の決断

誠意の薫と情熱の匂宮、どちらも選べず苦しむ浮舟。

こうなったら、自分ひとり、いなくなってしまおう。

昔話にも、二人の男どちらも選べず死を選んだ女の話があったことだし。

お母さまは悲しむだろうけど、他の兄弟姉妹の世話で忘れるだろう。

 

死を決意した浮舟は、後に残っては厄介な手紙を灯台で燃やしたり川に捨てたりして処分します。

 

 

一方、浮舟に匂宮が近づいている事を知った薫は、宇治に警備の兵を送ります。

そうとも知らず、匂宮が宇治にやって来ます。(しかし、匂宮は結構浮舟を訪ねてくるなぁ。薫も、もっと浮舟に会いに来た方がいいのでは...)

「おい、見慣れない男がいるぞ!」兵がざわざわしていて、匂宮は屋敷に近づけません。

 

なんとか女房の侍従(じじゅう)を呼んで、状況を知った匂宮。結局、浮舟に会えないまま帰りました。

 

自分の命は最後が近いと覚悟する浮舟。どうやってこっそり屋敷を抜け出すか、川を見つめながら考えます。

そこへ、母から手紙が来ました。

「昨晩、良くない夢を見ました。心配で、あちこちの寺でお経をあげていただいています。先程、昼寝の夢にも不吉な前兆を見たので、よくよく慎んでください」

 

自分が死を決意しているなんて母は知らないだろう。返事はこう書きます。

「生まれ変わっても、また、私のお母さまになってください」

 

そして、浮舟は遺書を残します。

「母に伝えて下さい。私の人生は終わったのだと...」

 

次回から新しい章に入ります。

浮舟7 選べないから苦しい

薫から暗に「他にお付き合いする男性がいるようですね」という手紙が送られた浮舟。手紙は「宛先違いのようなのでお返しします」と送り返します。

変に思った女房の右近がこっそり薫の手紙を見て、状況を察知しました。

 

浮舟と匂宮の仲を知っている右近と侍従(じじゅう)は、浮舟に話をします。

右近には姉がいて、地方の長官の館で働いていました。姉には恋人がいましたが、新しい男が姉に言い寄ってきて、姉は新しい男に心が動いてしまいました。

すると、嫉妬した姉の恋人は、新しい男を殺してしまったのです。

恋人は国外追放。姉も騒ぎを起こした原因として、長官の館を追い出されてしまいました。

 

「身分の高い低いに関わらず、こういったことで悩むのはよくないことでございます。どちらかお一人に決めなさいませ。匂宮さまにお心が動いているのなら、匂宮さまを選んではいかがでしょうか」

 

右近や侍従は、私は匂宮さまに心が動いていると思っているのか。

そうじゃない。匂宮さまがあんなにも愛を訴えてくるのは胸に響くけれど、長い事頼りにしてきた薫さまをいまさら裏切りたくない。

こんな、苦しい思いをする人が他にいるだろうか...

 

「私は、ただ世間並にさえ生きていけないのだわ。なんとかして死んでしまいたい」

「まあまあ、そんなに思い詰めではいけませんよ」右近と侍従は言います。

 

一方、事情を知らない浮舟の乳母は、思い詰めて臥せっている浮舟を見て「もののけ(悪い霊)が浮舟さまを惑わせているのでしょう」と思っています。(続く)

浮舟6 とうとうこの時が来た

浮舟が具合が悪いと言うので薫は使者を送ります。

その使者が宇治に着くと、ひとりの男とばったり。

「あれ、お前は...匂宮さまの手紙の使いだよな。こんなところで何しているんだ?」

「(やべっ、薫さまの使いだ)あ、あのー、私事で来ていまして...」

「すると、自分で自分の恋人に手紙を届けに来たのか?」

「いや、あの、宮さまの従者の○○さまから手紙を届けてほしいと頼まれまして...」

 

話がコロコロ変わるのでおかしいと思った薫の使者。お供について来た童に「あの男の後をつけるのだ。気づかれないようにな」と密かに命じます。

童がついて行くと、案の定手紙の使いは匂宮の屋敷に入って行くではありませんか。

 

童からの報告を受けた使者は薫に伝えます。

薫「その手紙の使いが持っていた手紙の色は?」

使者「紅でした」

 

そういえば、先程匂宮が熱心に手紙を読んでいた。あれも紅の紙に書かれた手紙だった...

ま、まさか匂宮と浮舟は、そういう仲なのか!?

 

薫は思い乱れます。

なんと抜け目のない男なんだ匂宮は...どうやって浮舟の存在を知ったんだ。

田舎だから、誰かに見つかるなんて事はないだろうと考えていた私は愚かだった。

浮舟も浮舟だ。かわいらしくて、おっとりしていると思っていたが、浮気者だったなんて...そんな性格なら、匂宮の相手にした方がいいだろうか。

 

いや、匂宮は飽きた女はすぐにポイするからな。姉の宮さまの女房になった女も何人かいると聞く。浮舟がそんな目にあうのはかわいそうだ。

 

 

とりあえず、薫は浮舟に手紙を送ります。

「まさか貴女が心変わりするとは思いませんでした。私を世間の笑い者にしないでください」

...!浮舟は心が真っ暗になります。とうとう薫さまは知ってしまったんだ...

 

言いたいことは分かりました、なんて返事は書けないし、間違いの可能性もあるので手紙は元通りに直し「宛先違いのようなのでお返しします」と薫に返します。

うまいこと言い逃れしたものだな。こんな機転がきくとは。薫は浮舟を完全に憎んではいないようです。(続く)

浮舟5 身動きが取れない

匂宮の情熱的なアプローチにときめく浮舟。一方で、誠実な薫に嫌われる事はしたくないと板挟みに苦しんでいます。

 

薫は4月にも浮舟を都に迎える予定ですが、それを知った匂宮は先に浮舟を都へ連れて行こうと画策しているようです。

浮舟は悩みます。(匂宮さまは熱烈にアプローチしてくる。けど、あの方は浮気な方だと言うから、いつか冷めてしまうかもしれない。それに匂宮さまは異母姉である中の君の夫ではないか...)

 

それに、匂宮さまにかくまわれたとしても、薫さまが知らないままということは無いだろう。薫さまに嫌われるのは、辛い。

どちらの方にも決められない。いっそ、私は消えてしまいたい...

 

 

そんな中、浮舟の母が宇治を訪ねてきました。

浮舟はこの頃、食事も取れないほど悩んでいて、やせて青白くなっています。いったいどうしたの?心配する母。

いっそ母の元へ行って、落ち着いて考えようかな...

 

浮舟の母は浮舟の乳母から、都への引っ越し準備について報告を聞きます。「薫さまから女房たちの衣装まで気を配っていただいて、ありがたいことです」ウキウキと話す乳母の様子を見て、浮舟は辛くて気分が悪い様子。

 

母はその後、浮舟と薫を仲介してくれた尼と話をします。

母「薫さまがこうして大切にしてくださって、ありがたい事です。中の君さまも大切にしてくださいましたけど、思いがけず匂宮さまに見つかってしまって、どうしたものかと思いました」

尼「匂宮さまは女好きなので、分別のある若い女房は大変だと聞いています。宮さまはご立派な方ですけど、この点が問題ですね」

母「もし、匂宮さまと過ちを犯してしまったら、これは親子の縁を切らねばならないと思っていましたのよ」

 

...!どうしよう、お母さまに匂宮さまの事が知られたら。胸が潰れそうになる浮舟。

いつか、こんなことが知られてしまう前に、死んでしまおう。

 

 

そして、母が都に帰る日がきました。このまま別れたらもう会えないと思う浮舟は「もうしばらくいっしょにいたいです」と言いますが、母は「あなたの具合も心配ですけど、あちらに出産を控えた子もいますし、もう帰らないと。もののけ(悪い霊)があなたを悩ませているのでしょう。お祓いなどをするようにね」と帰っていきました。

 

恋の板挟みに苦しみ、死ぬことを真剣に考え始めた浮舟。雲行きが怪しくなってきました。(続く)

浮舟4 アイツには取られたくない!

2月10日頃に宮中で漢詩を作る催しがありました。

みなさんが休憩している中、薫は降り積もった雪を見つめながら「今夜も宇治の橋姫は、一人私を待っているのだろうか...」とつぶやきます。

橋姫(はしひめ)は宇治の守り神。暗に浮舟のことです。

 

それを耳にした匂宮(薫の奴、浮舟をいい加減な相手とは見ていないようだな。私ひとりが、浮舟はひとりで寂しいだろうと思っていたのに、薫も同じ考えとは...)と嫉妬でモヤモヤして眠れません。

 

それで、雪道をかき分けるようにして浮舟に逢いに行きました。

まさか、こんな天気の時に逢いに来てくださるとは...浮舟、キュンとしてしまいました。

 

この前匂宮が来た事は、女房の右近が隠していましたが、今回はひとりでは隠せそうもありません。そこで、女房仲間の侍従(じじゅう)に「実は今こういうことになっていて...」と全部話して協力してもらうことにしました。

 

匂宮は川向こうの知り合いの家に浮舟を連れて、気楽に過ごそうと考えます。右近は留守番で残り、侍従は浮舟といっしょに出かけます。

 

二日間を楽しく過ごした匂宮と浮舟。匂宮は「大切に思っている人(薫)はこんなことはしないでしょう。お分かりですか」と言い、浮舟もこくりとうなずきます。

 

 

薫に逢えば、薫の誠実さを身に染みて感じる浮舟ですが、匂宮に逢えば熱烈なアプローチに酔いしれてしまう浮舟。名前の通り、落ち着くところなくゆらゆらと浮かぶ小舟のようです。(続く)

浮舟3 ゆらゆら

2月上旬になって、薫が宇治にやって来ました。まず仏さまを拝んでから、浮舟に会います。

 

薫は「愛しい、恋しい」なんてストレートに言う方ではありませんが、「いつもいっしょにいられないのが残念です」と言葉少なく語る様子が、かえって愛情の深さを感じさせます。

それに、将来末長く信頼できる様子は匂宮より上です。

 

匂宮に逢ってしまった自分が恥ずかしくなる浮舟。匂宮に逢ったことを薫さまに知られたら、きっと嫌われてしまう...

思い乱れている様子の浮舟を見た薫は(しばらく見ない間に成長された。寂しい山里生活で、いろいろ思う事があったのだろう)と感心します。まさか匂宮と逢ったなんて、思いもよりません。

 

「今、あなたの住まいを造らせていますが、大分完成しています。この春にもお連れしましょう」

薫の言葉に浮舟は(匂宮さまも、私を都に連れて行くとおっしゃっていた...いえいえ、匂宮さまになびくなんて、いけないことだわ)そう思いますが、匂宮の面影がちらつきます。

私はなんと、嫌な情けない女なのだろう...

 

もの思いからホロリと涙をこぼす浮舟。

「大丈夫。私たちの約束は朽ちることはないのだから」薫はなぐさめます。

 

本当に都の女性らしく成長なさった。浮舟をいとおしく思いながら薫は帰ります。

浮舟が変わったのは、匂宮に逢ったからなんですけど...そんなこと、夢にも思わない薫です。(続く)

浮舟2 波乱の予感

お正月の行事が終わった頃、匂宮は親しい者を選んで宇治へ向かいます。

宇治の旧八の宮の屋敷に着いて、こっそりのぞきこんで見ると...いました。自分の屋敷で見かけた謎の女(浮舟)です。

 

皆が寝静まった頃を見計らって、戸をトントン。

あら、こんな時間に誰かしら?女房の右近が出てみると「明日出かける予定があると○○(薫の従者)から聞いたので、急ぎ来たのだ」との声。いい香りもするし、薫さまだわと右近は思います。

 

さらに、「途中でえらい目にあって、ひどい格好になっている。明かりは暗くしてくれ」と言われたので、右近はきちんと確認できません。

 

すっと浮舟の寝所に入る匂宮。浮舟も最初、薫だとしか思っていませんでした。相手が匂宮と気がついた時は、時すでに遅し...ふたりは一夜を共にしてしまいました。

 

 

翌朝、匂宮は右近を呼んで「今日は帰りたくないな~」なんて言います。

えっ、匂宮さまだったの!?右近はやっと人違いと気がつきます。

しかし、もうどうしようもありません。とにかく、匂宮がいる事を隠さなければいけません。

 

他の女房には、「昨夜、浮舟さまは月のさわり(生理)があったのと、不吉な夢を見たので、今日のお出かけは中止です。部屋でつつしまなければいけません」と言い、さらに「殿は、こちらに来る途中ひどい目にあったので、こっそり衣類を届けて欲しいとおっしゃっています」と言っておきました。事態が事態なので「長谷寺の観音さま、今日一日を無事に過ごせますように」とお祈りしています。

 

一方、匂宮は浮舟と楽しく過ごしています。男女が寄り添う絵を描いて「この絵のように、いつもいっしょにいたいですね」なんて言っています。

 

ほんの少し逢わないだけでも死んでしまいそうなほど、恋い焦がれています。匂宮の情熱的な言葉に(この方はなんと、情愛が深いのだろう...)と浮舟はときめいてしまいます。

匂宮は翌日帰って行きました。

 

匂宮とも関係を持ってしまった浮舟。しかも匂宮に心動いてしまった様子。

今後どうなってしまうのか...(続く)