若菜 下10 妻を盗んだ男に会う
紫の上の急病と女三宮が妊娠して体調がすぐれない日が続いたことで延期になっていた、朱雀院の50歳のお祝いですが、12月になってやっと行われることになりました。
本番を前にリハーサルを行いますが、源氏の君は柏木を呼ぶことにします。彼は音楽や舞に精通しているから、手伝ってほしいとか。
源氏の妻である女三宮との関係が源氏にバレてしまい、恐ろしさのあまり体調を崩した柏木。出かけたくなかったのですが、事情を知らない父親から「大した病気でもないのだから、行ってきなさい」と言われ、行くことになりました。
「久しぶりだね、柏木。朱雀院は音楽に精通した方だから、しっかりと準備をしたいのです。私の息子は風流なことは得手ではないようだから、あなたの力をお借りしたい。舞を舞う小さい子どもたちにも、心構えなど教えてやってください」
何もこだわっていないようなのが辛い...早く源氏の君の御前から下がりたい柏木です。
リハーサルは盛大に行われ、終わった後は宴会になりました。お酒がまわり、年配の方は、今日は素晴らしかったと涙ぐんでいます。
源氏の君は「年をとると、酔っぱらって涙が出てしまうね。おや、柏木が笑っている。恥ずかしいことだ」
「いえ、私は笑ってなど...」
「でも、それも今のうち。年月は逆さまには流れない。誰も老いからは逃れられないよ」
そう言って、柏木の目を見ます。
この私を、老いぼれとあなどりおって...!
...源氏の君...!!
柏木は胸が痛くなり、宴も半ばで退出しました。
そのまま重病になってしまった柏木。離れて暮らすご両親が心配して、柏木を自分たちの手元で看病すると、柏木を引き取りました。
かつて自分も犯した罪ですが、源氏の君は柏木が許せなかったようですね。
次回から新しい章に入ります。