篝火(かがりび) ほんの少し変わる関係
「聞いたか、内大臣の今姫君(いまひめぎみ)の話😁」「ああ、聞いた聞いた😁」
このところ世間の人は何かと近江の君のうわさをしています。そんな状況を源氏の君はこう言っています。
「どういう子なのかちゃんと調べず引き取ったのがいけないのだ。それでいて、気に入らないとなると、うわさの種にして恥ずかしい扱いをするなんて。女の子は人目に触れないように育てるものなのに、さらし者にするとは」
変わった姫らしいけど、うわさの種にされてはかわいそうと思っています。
玉蔓(たまかずら)は近江の君の話を聞くにつれ
「実のお父様がどんな方なのか知らずに引き取られていたら、自分も恥ずかしい扱いを受けたかもしれない」と源氏に大切にされていることをありがたく思います。
源氏は相変わらず恋心を訴えることはありますけど、玉蔓は少しずつ源氏に打ち解けてきました。
秋になり、このところ源氏の君は琴のお稽古の名目で、玉蔓の所をよく訪ねています。
しかし、お稽古はそこそこに、琴を枕にふたりは寄り添って横になっています。
玉蔓の髪を撫でる源氏の君。
こうも近くにいるのに、なんでもない仲なのかと源氏は嘆きます。
お庭でともしているかがり火に、源氏は自分の恋心を重ねます。
かがり火と共に立ちのぼる恋の煙。あれは絶えることのない恋の炎です。私はいつまで待てばいいのですか。
妙な関係だと思う玉蔓、
煙に例える恋心なら、果てしない空に消してしまって下さい。他人に怪しまれます。
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