絵合2 勝負、始まる
出てきたのは、源氏の君が須磨で描いた風景画。当時を知らない人が見ても胸を打つ絵です。紫の上「どうして今まで見せてくださらなかったの?この絵が有れば、貴方を心配する気持ちが和らいだでしょう」と残念がります。
一方、葵の兄は、源氏の君も絵を集めているということで負けていられないと思います。以前から上手な絵描きを集めて絵を描かせていましたが、表紙や紐飾りまで念入りに作るように指示します。
こうしてすばらしい絵が集まったので、藤壺がご覧になるなか、絵合をしようということに。三月の十日すぎのうららかな日です。
梅壺方は「竹取物語」「伊勢物語」など当時すでに古典とされていた名作ぞろい、弘徽殿方は「宇津保物語(うつほものがたり)」「正三位(しょうざんみ)」など当時の新作で華やかなものがそろっています。ちなみに、正三位以外は現在でも読むことができます。
ちょっと様子をのぞいてみますと...
「かぐや姫が、この世の濁りに染まらず天に昇った運命は、浅はかな女の目にはわからないでしょう」
「かぐや姫が天に昇った様子は誰も見ていません。それに、竹の中に生まれるなど、身分がいやしいのです」
「宇津保の俊蔭(としかげ)は苦難を乗り越え、よその国でもこの国でも名を残しました」
あら~、白熱していますね。
勝負がつかないので源氏の君「それなら冷泉帝の御前で勝負しよう」と言い出します。受けて立つ、と葵の兄。
今回のためにわざわざ新しく絵を作るのもおもしろみがないから、手持ちのものだけで、と源氏の君は言いますが、負けられない葵の兄は、秘密の部屋で製作させています。(続く)