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蓬生3 それでも待つ女、末摘花

叔母は出発が近くなったある日、末摘花の屋敷にズカズカとやって来ました。「まあ、こんなひどい屋敷にお住まいとは」と気の毒がりますが、薄っぺらなうわべだけの口ぶりです。

「近くに住んでいるうちは頻繁に連絡しなくても大丈夫だろうと思いますが、遠くに離れれば心配です。お衣装も用意しました。いっしょに行きましょう」

「お気持ちはうれしいですが、私は変わり者です。このまま、この屋敷と共にいようと思います」

 

「そんなことしても無駄と思いますよ...源氏の君は浮気な方で、あちこちに通っていたそうですが、今や、紫の上という方お一人だけを大切にしていらっしゃると聞きます。源氏の君がこんな草ぼうぼうの荒れ屋敷に、変わらずに待ってくれている人がいるなんて思うでしょうか。源氏の君にかえりみられて、ここが花の屋敷にでもなれば喜ばしいことですが」

 

その通りだわ、と末摘花は悲しくて泣くばかり。それでも動く様子はありません。

 

「じゃあ、おいとましますけど、侍従は連れていきますよ。この人、私の夫の甥といい仲なので...」「姫様、申し訳ありません。夫がどうしても私を大宰府へ連れて行くというので...」

なんと、とうとう侍従も末摘花の元を去ってしまいます。末摘花は恨めしく思いますが、引き留めることはできません。ただ声をあげて泣くばかり。

 

 

侍従が去ってしまったことで、いよいよこれはダメだと女房たちは思ったのでしょう。行き場のない老女たちさえ、知り合いを思いだしてはここを出る算段をつけようとしています。(続く)