澪標6 源氏物語で最も美しい和歌の贈答
一方、源氏の君は明石の君も今日お参りに来ていたのを知って、こちらの派手な行列に気圧されてしまったのだろうと気の毒に思います。明石の君を気遣って和歌を送ります。
この和歌、源氏物語で最も美しいやりとりだと私は思っています😊というわけで、今回は原文で紹介します。
まず、源氏が送った歌
みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐり逢ひけるえにはふかしな
(この身をつくして恋するしるしに、ここでもめぐり逢うことができました。私達の縁は深いのですね)
澪標(みおつくし)は水路のしるしですが、「身をつくし」とかけて、恋の歌によく詠まれます。
源氏物語では、予言や運命論がよく語られます。小学生の時、初めてこの歌を知って「そうか、この二人の出逢いは運命の出逢いなんだ」と胸がトキメキました😃確かに、都と明石、この時代ならまず出逢うことのない所にいる二人でしたから。
和歌を受け取った明石の君は源氏の君の心に涙します。お返事は
数ならで難波のこともかひなきになどみをつくし思ひそめけむ
(数にも入らないわたくし。何につけても甲斐のない身なのに、どうして身をつくして、あなたを思いそめてしまったのでしょう)
一見「あなたに恋するんじゃなかった」という風に思えますが、そうではないと私は思います。
そもそも明石の君は、源氏の君との恋は身分違いだと慎重な態度でした。苦労することは目に見えて分かっています。
それでも...貴方を思う気持ちを止めることができません。情熱を秘めた恋の歌だと私は見ています。(続く)