夕顔4 もののけ現る
夜、二人で寝ていると枕元に美しい女が
《わたくしが、たいそうすばらしいと見奉る、を、お尋ねにならず》
「こんなどうということのない女を連れ歩いてちやほやしているとは、実につらいことです」
と言って夕顔を起こそうとします。あわてて明かりを持って来させてみると、夕顔は息絶えていました...
なんだかシューベルトの魔王を彷彿とさせる展開。夕顔はもののけに命を取られてしまいました。
このもののけ、何者でしょうか。研究者の間でも意見が分かれています。
だいたいの意見は
1 なにがしの院に住み着く亡霊
2 六条御息所の生き霊
です。2は、源氏の君が眠る前に六条御息所のことを考えたことで、生き霊を呼んだとされています。
私は学生時代、1だと思っていました。《》部分は原文の直訳ですが、原文は《己がいとめでたしと見たてまつるをば尋ね思ほさで》と言っています。この一人称「己(おの)」は、女性が使う言葉ではありません。それに、源氏の居場所を知らない御息所がどうして現れることができるだろう。そう考えていました。
しかし、ある女性の話を聞いて考えが変わりました。その人は人の念に敏感な人でした。
人の念は飛んで行くことができる。相手がどこにいても。たとえ自分はその場所に行ったことがなくても、念を飛ばすことができる。
うーん、そうなると、六条御息所説も考えられる。それに、今回ブログを書くにあたり原文を読み直してみましたが、夕顔の章は妙に六条御息所の話が多い。まさか式部先生は、もののけが六条御息所の生き霊だと読者をリードしようとしているのか。そんなことも考えてしまいます。
注意 これを読んでいる学生の方、レポートの資料に使ってはダメですよ。レポートは確かな資料に基づいて書くものです。こんな話があった程度にしましょう。