夢浮橋(ゆめのうきはし)1 浮舟、生きていたのか...
比叡山へお参りをして、横川の僧都(よかわのそうず)に対面した薫。
「ふもとの山荘で、隠れ住まいをしている人がいて、その人は出家したと聞きましたが...」
薫さまはあの女性を詳しく知っているらしい...僧都は女性を助けたことから本人の願いで出家させたことまで、全部話しました。
話の状況から、女性は浮舟だと確信した薫。死んだと思っていた人が生きていたなんて...涙がこぼれます。
僧都は薫の様子を見て(こんなに愛していらっしゃる女性を、本人の希望とはいえ、この世では生きるかいのない尼にしてしまった)と悔やみます。
薫は僧都に「山荘に案内して欲しい」と頼みますが、僧都は「出家した人の心を乱す行為はできない」と断ります。
それなら、と薫は自分に仕えている浮舟の腹違いの弟を山荘に行かせたいと頼みます。僧都もそれは了承して、手紙を書いて浮舟の弟に持たせます。
比叡山を下山する薫の行列は、浮舟の住む山荘からも見えました。聞き覚えのある従者たちの声。振り払うように浮舟は念仏を唱えます。
次の日、僧都から浮舟に手紙が来ました。
「昨日、薫さまの使者は来たでしょうか。あなたを尼にしたことを悔やんでいます」
私のことが知られてしまったか...
これはどういうことなの?浮舟を世話している僧都の妹尼は尋ねますが、浮舟は何も言いません。そこへ、浮舟の弟がやって来ました。(続く)