松風1 明石の君、上京
源氏の君は住まいの二条院の東側に東の院を建てて、花散里や末摘花、空蝉たちを住まわせることにします。こちらに明石の君も住まわせる予定です。
明石には絶えず手紙を送り、その度に上京するようにと書いています。
でも明石の君は慎重になっています。「高い身分の方でも源氏の君とのお付き合いは気苦労が多いと...私みたいな身分の低い者がノコノコ行ったところで、世間の笑い者になるだけじゃないかしら」
「とはいえ、娘は源氏の君の子ども。一人前の扱いを受けられないまま、この地で育てていくのはかわいそうなことだし...」悩みはつきません。ご両親ももっともなことと思います。
そこで、母方の祖父が所有していた屋敷が都の近くの大堰川(おおいがわ)のほとりにあるので、そこを修理してひとまず住もうということになりました。
源氏の君は明石の入道から手紙を受け取り、「こういうことを考えていたのか」と感心します。こちらからも人を送って修理を手伝わせます。ちょうど源氏の君が建てている御堂の近くです。
そして秋になり、いよいよ上京の日が来ました。(続く)