若紫1 愛する人の面影
源氏物語のヤマ場となるお話がぞくぞく出ます。お楽しみに。
季節は春になりました。源氏の君は病を煩い、加持(かじ 密教の祈り)を受けるため北山へやって来ました。当時は病になると仏教の力を頼っていました。
だいぶ具合が良くなったので外に出ると、女性のいる庵が。はて、僧の山になぜ女性がいるのかなと見に出かけます。
するとそこは尼が住む庵。しばらく見ていると、
「雀の子犬君(いぬき 召し使いの女の子)が逃がしちゃった~」
と走ってくる女の子。なんと藤壺にそっくりです。
この女の子こそ後の紫の上。でも、まだ小さいので紫の姫君と呼びます。
似ているのも道理で、彼女は藤壺の兄の娘。ただし正妻の娘ではないとのこと。母親は既に他界していまして、祖母の尼君と暮らしていました。
事情を知った源氏の君は尼君に直談判。紫の姫君の後見人になりたいと。
しかし、これは半ば結婚の申し込み。まだ幼い子供ですと尼君は断ります。
それにしても、源氏の君といい父帝といい、そっくり親子だなと思います。愛する人が忘れられないので、似た人を求めるとは。桐壺の代わりに藤壺を、藤壺の代わりに紫の姫君を。
ちなみに、桐の花も藤の花も紫色。三人が似ていることを暗示しているそうです。
病気が治った源氏の君を左大臣家の皆様がお迎えに来ました。北山はまだ桜が盛り。桜を愛でながら音楽を楽しみます。美しい桜の下、源氏の君が琴を演奏するのがとてもすばらしいと描かれています。
紫の姫君は、源氏の君の様子を見て「私の父様より立派な人ね」と言います。すると尼君が「あの方の御子になりますか?」
「そうなったら素敵」と姫君は応えます。(続く)